強くて優しいお巡りさんのはなし

透ちゃんは強い。と思う。

でも強いだけじゃなくて弱さも、優しさも、脆さも、儚さも、全てを抱えて生きてきた、そこからきた強さだと思う。

 

透ちゃんが純名を撃ったとき、この人は強いんだと確信した。ボイス1で故意ではないとはいえど人を殺してしまったのに、カチカチ野郎に対して銃を撃てなかったのに、この人に銃の引き金が引けるのだろうか。ドラマを観ながらそう思っていた。多分純名を撃てないんだろう、石川透ってそういう人間だったはず。でも違った。人を殺してしまったというトラウマより、彼の中では白塗りの共犯者を逃がさないこと、公園にいる子供たちを守りたい気持ちが大きかった。彼は前回よりも確実に成長して強くなっていた。その結果、純名から呪いのキス(私が勝手にそう言ってるだけ)をされ、PTSDを患ってしまうけれど、私は透ちゃんの強さはここに現れたと思う。

 

7話の透ちゃんメイン回。透ちゃんが容疑者となってしまった、最後の最後に撃たれてしまったあの回。あの時だって透ちゃんは強かった。目が覚めたら、手には拳銃、目の前には小野田本部長の遺体、ボイスレコーダーには「重藤班長」と言う自分の声。訳がわからなかったと思う。記憶が飛んでしまって、自分か殺したのかどうかも分からない。もしかしたら自分が殺したのかもしれない。でも彼は懸命に事件解決の手がかりとなるものを探した。多分、時系列的に前日は6話のあの少女を救えなかったあまりにも辛すぎる事件の起きた日。気持ちはボロボロだったと思う。屋上でひかりを人質にとったとき、やっぱり透ちゃんは弱いのかなと思ってしまった。今思えば本当に申し訳ないと思う。透ちゃんがただ弱いだけの人間なわけないじゃないか。最初は錯乱状態だったのかもしれない。でも違う。ECUの皆が透ちゃんの無実を証明し、透ちゃんは確実に皆に救われた。仲間によって強くなれた。ひかりに耳打ちをして自分の作戦を兄貴に伝えたとき彼は笑っていた。透ちゃんは強かった。刑事だった。犯人を捕まえるために、全力で立ち向かう男。その姿は透ちゃんが大好きな兄貴にそっくりだったよ。

 

 

透ちゃんは強いという話をしたけれど、透ちゃんは強いだけの男では無い。優しい。6話で女の子を救えなかった時、金髪YouTuberを殴った時、7話で兄貴と電話をした時、非常階段でひかりに見つかった時、透ちゃんは泣いていた。どこで知ったかは忘れてしまったし、ニュアンスになってしまうけれど、私の中で心に残っている言葉がある。

「苦しいとき、優しくない人は怒る。だけど優しい人は泣いて悲しむ。」

泣いている透ちゃんを見た時、これだ、と思った。透ちゃんは優しいんだ。自分の弱さを怒る人ではなく、悲しめる人なんだ。正直、透ちゃんの苦しみなんて私には分からない。いや、分かりたいけれど私が理解できる以上に透ちゃんは苦しんだと思う。兄貴とひかりになにか隠していることがあるだろうと問い詰められたときも「兄貴みたいになりたい」「頑固なのは兄貴譲りですよ」と笑って、現場を退くことをしなかった透ちゃん。全部言えばいいのに。悩んでるなら相談してよ。何百回と思った。でも透ちゃんは抱え続けた。それも彼なりの優しさだったのかもしれない。
大樹とのシーンは透ちゃんの優しさにあふれていた。「あの動画」が確固たる証拠だ。ボイスを観ていた人なら分かるだろう。

 

「苦しくても最後まで諦めない」

「何があっても乗り越える」

「兄貴みたいな男に一緒になるって約束したでしょ?」

「大樹のパパは、さいっきょうの男なんだ」

「だから大樹も大丈夫」

「退院したらまた一緒にラーメン食べに行こう」

「じゃあね、頑張ってね、ばいばい」

 

こんなに優しさに溢れたメッセージがあるだろうか。私は何度もこのメッセージに救われた。大樹だって、兄貴だって、透ちゃんの優しさに救われたはずだ。そもそも入院してる大樹に動画を撮って送ること自体に透ちゃんの優しさが溢れている。普通の人ならばこのようなことはしない。透ちゃんが大樹を想っていた証拠だ。

苦しくても最後まで諦めない。何があっても乗り越える。これが透ちゃんの生き様なのではないか。少なくとも、私はそう思う。

 

最後に。透ちゃんは幸せだったのだろうか。兄貴を裏切り、2人も人を殺してしまい、PTSDになり、最後は殺されてしまう。もし、透ちゃんの人生を私が歩んだとしたら、幸せとは思えないだろう。でも、私は幸せだったのではないかと思う。自分が最も尊敬する兄貴と出会い、一緒に事件を解決し、最期には兄貴に「透は弱くなんかない」と言ってもらえた。透ちゃんはこのときも涙を流していた。刑事という仕事に全てを懸けた彼からしたら、この上ない幸せではないか。透ちゃんが息絶える前、「兄貴…必ず…」と言ったあと何を言おうとしたかは分からない。白塗りを捕まえてください、なのか、兄貴の隣に戻ってきます、なのか。考えればいくらでも出てくる。
とにかく、私は透ちゃんは幸せだったと思う。私がそう思いたいだけかもしれない。幸せじゃなかったとしても、兄貴の横にいた、事件を解決する透ちゃんは幸せに見えたよ。

 

 

石川透巡査部長、今までお疲れ様でした。私にとって世界で1番かっこいいのは透ちゃんだよ。いろんなことを無視して私の気持ちだけをいうなら、正直生き返って欲しい。また透ちゃんが現場で活躍している姿を見たい。でも、この人生を生き抜いた透ちゃんはほんとにかっこよかった。なによりも輝いて見えた。今、透ちゃんが穏やかに過ごせているのならそのままでいい。透ちゃんがいない現実を何十年もかけて受けとめる。空から、私たちを、大樹を、兄貴を、見守っていてね。

強くて、優しいお巡りさん。これからもずっと大好きです。